実際には感染していないのに陽性と判定される「偽陽性」や、感染しているにもかかわらず陰性と判定される「偽陰性」だ。特に偽陽性は、必要のない人の隔離にもつながる可能性があるため、「人権問題になる」として、絶対に避けるべきだとの考えが公衆衛生の専門家や医系技官の間には根強くある。

 ただ、こうした指摘に医療ガバナンス研究所の上昌広理事長はこう反論する。

「日本ではよく偽陽性が1%出ると語られますが、根拠のない数字です。海外の権威ある科学誌では基本的に陰性を陰性と判断する特異度は100%としています。つまり、偽陽性など出ないということです。仮定でも偽陽性1%とするデータなど存在しませんし、『エラーはゼロではない』などというのは、素人でも言える話です」

 その上で、何が必要か。渋谷教授はこう指摘する。

「そもそも予算が少なすぎます。行政検査ではなく、医師の判断で保険適用で自己負担なしの検査をできるようにするべきです。医療や介護の現場で働く人たちには、定期的に検査を受けられるような仕組みも必要です。設備やイノベーションへの投資も日本では足りていません」

 政治からまずもらいたい答えは、「できない理由」ではない。(編集部・小田健司)

AERA 2020年8月24日号より抜粋