8月12日配信の朝日新聞デジタルの連載で「吉村知事人気で『東征』一気、維新の胸算用」と題された記事を見つけた。いかにもホラ貝が聞こえてきそうな見出しである。こういう戦国武将感のある政治報道も、ヒーローを間違って育てる風土を生んでしまったのかもしれない。中身よりも、政局や組織の力関係を論じたがる日本の政治記事をはじめ、オジサンたちはヒーローが好きなのだろう。
そう、私の維新への違和感は、あの党の男性政治家たち(驚くほど女性が少ない政党ですよね。ほぼ男子校だ)の言動が、市民を支えるのではなく、「オレの夢を一緒にかなえてくれ」……と市民に要求するかのような、何か勘違いをしているように見え、それがどこか無自覚なDVの振る舞いに似ているからだろう。俯瞰(ふかん)すれば滑稽だけれど、真剣なのでけっこう厄介。
ちなみに西の知事がポビドンヨードを掲げた前日、東の知事は「家族で歯磨き粉は共有しないで」と言っていた。歯磨きとかうがい薬とか、知事が真剣に報告するような話なのかと暑さでボーッとしながらも、男のヒロイズムに巻き込まれる政治に警戒心が深まっている。
■ 北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表