安倍政権肝いりでスタートした「Go To トラベル」キャンペーンが物議を醸している。8月13日には新型コロナウイルスの感染者が国内で1172人確認され、1カ月前に比べ3倍以上に増えた。時事通信の世論調査では、7月22日のキャンペーン開始について82.8%が「早過ぎる」と回答している。ある自民党幹部は言う。
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「夏に『Go To』を実施して少しでも景気回復につなげ、安倍政権の支持率をアップさせたいと考えていたが、先に第2波が来てしまった。実は、直前の段階では安倍晋三首相も実施はほぼあきらめていた」
ところが、政権中枢に予定通りの開始に固執する人物がいた。菅義偉官房長官だ。政府内では当初、7月22日のキャンペーン開始を前に首都圏の1都3県(東京・神奈川・千葉・埼玉)を除外する方向で調整が進められていた。それがくつがえったのが7月16日だ。
この日に開かれた参院予算委員会には、参考人として政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が出席。キャンペーンについて「今の段階で全国的なキャンペーンをやる時期ではない」と述べた。分科会のメンバーではないが、東京都医師会の尾崎治夫会長も「東京や東京周辺、大阪とかは(キャンペーンから)外し、しっかり感染予防に取り組んだほうがいい」と語っていた。
これに菅官房長官が激しく反発した。前出の自民党幹部は言う。
「安倍首相もコロナ対策を担当する西村康稔経済再生担当相も、首都圏を『Go To』から外すことで了承していた。それを、自らキャンペーンを推進してきた菅さんが、『東京だけ除外』で押し切った。西村氏は苦笑するしかなかったそうです」
同日の夕方には、尾身会長も出席する新型コロナウイルス感染症対策分科会が開かれる予定だった。そこで政府は、分科会の開始直前に東京だけをキャンペーンから除外することを決定。その案を分科会で緊急提案し、委員から了承を受けた。委員の一人は、納得のいかない様子でこう話す。
「会議の直前に、『GoToは東京だけ除外』という情報が突然流れてきた。『Go To』については分科会で議論すら始まっていなかったので、先に『決定事項』として提案されたこともあり、なすすべがなかった」