西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、コロナ禍で行われた甲子園の交流試合について論ずる。
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今年のセンバツ代表校を招待しての甲子園の交流試合が8月10日から始まった。勝っても次があるわけではない。たった1試合の戦いで選手はどんなプレーをし、監督はどんな起用をするのかと思って見ていた。やっぱり勝って終わりたいというチームの思い、選手の気持ちが出ている。甲子園という舞台は球児にとって特別な場所であると感じた。
「交流試合」と銘打たれているだけに、別に甲子園の舞台に立たせてあげることを主眼に置いたっていい。だが、投手だけを見ても、完投するエースがいる。いろいろとチーム内で話し合った上で、どう戦うかを決めたことだろう。真剣勝負が多いからこそ胸を打たれる。
12日には中京大中京(愛知)の高橋宏斗が智弁学園(奈良)戦に臨んだ。今年の高校ナンバーワンとも聞いていたから、テレビで見てみた。
評価を聞かれると、正直、答えが見つからない。なぜなら、彼の本当にいい時を知らないからだ。投球フォーム的にも目についたところもない。これが、何試合か見た上でなら判断できるが、「甲子園の1試合」が「その選手の何%のパフォーマンスだったか」を見極めるのは相当難しい作業だと感じる。
ただ、高橋を見ていて100球を超えても150キロを投げていたように、馬力という点で魅力は感じた。「高卒ルーキーで早くから出てくる可能性がある投手の見極めは?」とよく聞かれるが、答えは決まっている。「プロで戦う体力、馬力があるか」だ。プロは先発なら「1週間に1度、100球以上一定以上のレベルで投げられるか」だし、救援投手なら「毎日投げる準備をできるか」である。細かく言えば「100球を投げても球威があるかどうか」。最速○○○キロとよく言われるが、初回の1球目で出た球速が最速では、意味がない。勝負どころで、その日のMAXの球が出せるかだ。そう考えると、高橋は、100球超えても150キロをコンスタントに出していた。