


椎間板ヘルニアは腰だけでなく、首でも起こる。自然とヘルニアが小さくなり、手術をせずに痛みが治ることもあるが、脊髄が圧迫されれば、手足が麻痺して動かなくなることもある。正確な診断と治療が欠かせない。
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■ 30代~50代で多く発症 手遅れになる前に専門医へ
頸椎は七つの椎骨という骨がつながり、間に椎間板が入っているため、可動性があり荷重にも耐えうる。椎間板はクッションのような、円盤状の軟骨組織だ。外側はおもにコラーゲン線維でできた線維輪、内側はゼリー状の髄核からなり、弾力性がある。東京歯科大学市川総合病院脊椎・脊髄病センター長の青山龍馬医師は、次のように話す。
「頸椎の組織の中で、常に圧力がかかる椎間板には、もっとも早く障害が表れます。20歳くらいから椎間板の線維が切れて亀裂が生じ始め、徐々に弾力性が低下して頸部に痛みが起こります。椎間板は『人体最大の無血管組織』といわれ、血流がないため一度悪くなると回復しません。椎間板が破れておもに髄核が飛び出し、神経根や脊髄を圧迫するものを、頸椎椎間板ヘルニアと呼びます」
頸椎椎間板ヘルニアの好発年齢は、30~50代。神経障害の部位に対応した症状が表れる。神経の枝の部分が圧迫される神経根症では、うなじの部分にあたる項部から肩甲骨周囲への放散痛、片側の腕や手指の痛みやしびれが起こる。中枢神経の本流が圧迫される脊髄症では、四肢の痛みやしびれ、両手指の動きがぎこちなくなる巧緻運動障害、四肢の脱力、つっぱり感、歩行困難、排尿・排便障害などがみられる。
「神経根症では激烈な痛みに我慢できず、すぐに来院する人が多くいます。一方、脊髄症では動けなくなってからようやく受診する重症例もあり、手遅れになる前に専門医にかかることが大切です」(青山医師)
■ 必要な検査は? 正確な診断が重要な理由
ヘルニアはおもにMRI検査により確認される。X線、CT検査、身体診察による所見などとあわせて、頸椎の病変を総合的に診断する。済生会川口総合病院副院長・整形外科主任部長の新井嘉容医師は次のように話す。
「頸椎では腰椎より少ないものの、飛び出したヘルニアが時間の経過とともに分解され、自然と小さくなります。急性例では、発症から4カ月程度で著しく痛みやしびれが改善することが珍しくありません」