千葉駅は行政や商業の中心地などとして発展するとともに、房総各地への玄関としても重要な役割を担ってきた。JRと京成、千葉都市モノレールの鉄道各地線のほか路線バスとも多数乗り入れているが、京成千葉線の終点・千葉中央駅は古くからバスターミナルとの併設し、鉄道との競合路線の拠点となっていた。
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■風格に満ちたバスターミナルがあった京成千葉駅
「国鉄の列車か、それともバスか……?」
のっけから個人的な話になってしまうが、母の郷里が千葉県の成東だったため、幼少のころは両親に連れられて訪れる機会が多かった。千葉市の自宅から成東まで行くには、国鉄(当時)の黄色い総武線電車で千葉へ、そこから総武本線の列車に乗り継ぐのがセオリーのハズだが、千葉から路線バスに揺られることも少なくなかったため、子ども心に「今日はどっちにするのだろう?」と楽しみにしていたのを思い出す。
バスの場合、京成千葉駅(現・千葉中央駅)から直通の路線バスに乗る。国鉄の千葉駅と京成千葉駅との間は700メートルほど離れている。つまり、千葉駅で国鉄の列車同士を乗り継ぐほうが楽なのだが、両駅間は京成の高架下がショッピングセンターになっていて、ここで手土産やそのほかの買い物をするというのが両親の狙いだったのかもしれない。
ショッピングセンターを歩くのも楽しかったものだが、京成千葉駅と同居するバスターミナルがまた好きだった。高架下にあって駅の通路と直結する薄暗いバス乗り場には、バスが係員の笛の合図とともにバックで入場し、しばらく停車しては次々と出発していった。8番線か9番線までの乗り場があったそれぞれの番線には行き先や経路などが表示され、どことも知れない地名が興味を引く。構内には売店や飲食店などが軒を連ねていたが、現在と同様に映画館なども同居していて、そういう点でも風格のあるバスターミナルだった。千葉駅から乗る総武本線の列車(ごく幼少のころは蒸気機関車が牽引する旧型客車が走っていた時代である)に乗るのもワクワクさせられた一方で、京成千葉のバスターミナルも旅情を誘うに十分だったのである。