前出の富沢さんをはじめ、受験関係者からは個別試験で数学IIIまで範囲としていた理工学部でさえ、数学II・数学Bまでしか含まない共通テストで代替することに懸念の声もあがる。その点について同大は「学内でも多くの議論があったが、(数IIIの能力測定のために)受験生の安心・安全を後回しにはできない」と強調。入試で担保できない部分については入学後の補習などで対応する方針だ。
■早慶などは狙い目か
受験生や高校・予備校の現場には動揺も広がる。
「横国のボーダーラインはまず上がると考えられます」
そう話すのは同大に進学する生徒が多い神奈川県立横浜翠嵐高校の進路指導担当、青木健総括教諭だ。
「横国が第1志望の生徒は、共通テスト対策に専念したいでしょうが、併願する私大や共通テストをしくじった時の他大への乗り換えを考えると悩ましい」
同校では例年、東大や東工大、一橋大を狙いながらセンター試験で思うように得点できなかった場合の次善策として、同大に志望を変える生徒もいた。
「今回、横国がそうした生徒たちの受け皿になり得ないかもしれない。問題はボーダーラインがどのくらい上がるかですが、秋以降の模試で受験者全体の動向を見極めないとなんとも言えません」(青木教諭)
感染状況いかんによっては、横国に追随する大学が出てこないとも限らない。その場合、志望動向全体を予測するのは極めて難しくなるだろう。
今回の受験は感染リスクや将来の経済不安から、地方の受験生の地元志向が強まっていると言われる。前出の目黒高校の鎌田教諭は、首都圏の感染者が今後増えるようなことになれば、地元志向に拍車がかかり、早慶MARCHクラスの志望者は減るのではないかと見る。
「だとすれば逆に狙い目になる。生徒にはちょっとでも可能性があるならチャレンジするよう勧めています」(鎌田教諭)
(編集部・石臥薫子)
※AERA 2020年8月31日号より抜粋