「7月改定までパラジウムなどがものすごく上がっていて、長期の逆ざやとなっていました。7月改定でようやく実勢価格に追いつきましたが、歯科医には逆ざやの不安が10月改定以降もつきまとっています」
神奈川県保険医協会も「基本的には追いかけっこ。上がり続けるのであれば、追いつけないことになります。金パラ合金の問題で、歯科医の経営は苦しくなっています」(担当者)と説明する。
逆ざや問題について、厚生労働省の担当者は次のように弁明する。「ルール上は数カ月前の値を反映させます。いままでの歴史をみると、逆ざやと利ざやの時期が同じくらいあり、バランスをとってもらっています」
診療報酬の改定を半年ごとから3カ月ごとに縮めたので、その効果に関しては「ひとまず様子をみさせていただきたい」とした。
金パラ合金の逆ざや問題は、金をはじめとする貴金属価格の高騰が背景だ。田中貴金属工業のサイトによれば、1グラム当たりの金の価格は、税抜き参考小売価格(月平均)で、昨年前半は4千円台後半で推移していたが、同年8月に5千円台へ。年明け後にじわじわと上がって6月、7月と6千円台だった。そしてついに8月7日、税込み小売価格で7769円と過去最高値を更新。税抜きでも8月は7千円台となった。
「ここ数年は世界の中央銀行が買うだけでなく、年金資金でも買われています。株式の運用に比べて、金は安定しています。買うほうは安心感があり、乗り遅れてはいけないと、みなさんが買っています」
田中貴金属の加藤英一郎・貴金属リテール部長は話す。同社では、7月の金販売が1年前の約3倍に増えた。「多い日は半分くらいが新規のお客さまで、リピーターも多い」という。
金相場の長期的な値上がりは、中央銀行の金売却を制限する1999年のワシントン合意にあるとみるのは、日産証券調査部主席アナリストの菊川弘之さんだ。
「2000年以降は金相場が大きく上がりました。中国が市場に参加してきたほか、原油価格の上昇でオイルマネーも入ってきました。08年のリーマン・ショックで一時下げましたが、米国など中央銀行の金融緩和政策で、金市場にもお金が流入しました」