その一方、トイレの歴史は節水の歴史でもある。環境問題への意識の高まりを背景に著しい進歩があった。

「60年代の大便器は1回使用すると約20リットルもの洗浄水が必要でした。しかし、国内での水資源節約の機運が強くなり、76年にはTOTOから13リットルで流せる節水便器が誕生。また海外では、92年に米国で制定された『エナジーアクト法』によって、新規生産は6リットル以下という規制ができて拍車がかかりました」(同)

 6リットルでは流しきれず、2回、3回と流さざるを得ない便器もあった。しかし、同法に先駆けて88年からアメリカで6リットル便器を販売していたTOTOの便器は、1回でしっかり洗浄することで同国での信頼を勝ち取った。

 そして93年。それまでのトイレに付きものだった“貯水タンク”をなくした意欲的な「ネオレストEX」が発売された。二つの水流をコンピューター制御することでタンクレスを実現した上に、それまで13リットル必要だった洗浄水を一気に8リットルまで約4割も減水。

“環境に優しい”イメージを、一般家庭だけではなく、法人ユーザーや施工業者に強烈に印象付けた。

「『ネオレストEX』が業界からも注目を浴びたのは、機能とデザイン性の両立を目指したこと。狭いトイレ空間に余裕と広がり感をもたらし、空間づくりの自由度を高める画期的な商品でした。加えて重要だったのは、『一体形便器』という点です」(TOTO本社広報グループ)

 一体形は各パーツがトータルデザインされているため、スタイリッシュで清潔感があり、「ネオレスト」シリーズは最新技術を導入した高級ブランドとして同社のトイレを牽引(けんいん)し続けている。

 さらに同社はお尻を洗う洗浄水に着目。「コンパクトでシンプルな形状でありながら、貯湯式のウォシュレットと同等の洗浄感を持った瞬間式のウォシュレット」という命題を解決する新技術を開発した。

 それが「ワンダーウェーブ洗浄」だ。

「コンパクトなデザインを実現するには、貯湯タンクを必要としない瞬間加熱式であることが条件です。しかし、一般家庭の電気容量の都合上、瞬間加熱式は使える湯量に限りがあり、洗浄感に物足りなさを感じる方もいました。少ない湯量でたっぷり感をもたらすために考案されたのが、水玉を噴射して洗浄する方法でした」(同)

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