コロナ禍の中、自宅を売却するタイミングも気を付けたほうがいい。

 2年前の夫の死を機に、高齢者向けマンションに移った80代の女性はこの8月、空き家となっていた都内の自宅を売却した。40年以上家族で暮らしてきた思い出の残る家でもあり、本音を言えば納得できる価格が提示されるまで手放すつもりはなかった。私鉄の駅から徒歩5分という好立地だけに、いい条件で売れるはずという思いもあった。

 しかし6月に入ると、売却を依頼していた不動産業者から毎日のように電話がかかってくるようになった。業者は自宅のある地域は地価が上昇する見込みがないこと、在宅勤務が一気に進んだことで駅近物件のプレミアムがはく落していることなどを理由に挙げ、「今なら譲渡所得から3千万円まで控除できる特例(被相続人の居住用財産<空き家>に係る譲渡所得の特別控除の特例)も使えますし、価格を下げて売ってしまったほうがお得ですよ」と迫ったという。

 高齢でもあり、子どもに迷惑をかける前にと売却を決意した。当初の売り出し価格より3割近く値引きした自宅には瞬く間に買い手が付き、都内を中心に活動する建売業者が購入した。

 契約の手続きが終わった後、書類の準備や荷物の片づけなどを手伝ってくれた長女から「お母さんはこんなに元気なんだし、急いで売る必要はなかったんじゃないの?」と呆れられ、もうしばらく様子を見てもよかったかもしれないと後悔し始めている。

 では、自宅の売却を考えている人は、どのようにタイミングを見極めたらいいのだろうか。

「ウイルスの感染が拡大する前はマーケットの過熱感が顕著で、東京オリンピックの後は不動産価格が下落する可能性が高いと指摘する声もあり、早めに売ったほうがいいと勧めてきました」と前出の飯田さん。

 しかし、心配されたコロナ禍の大暴落も今のところは回避されており、さらに、不動産は株式のように短期間で急騰したり急落したりする類のものではない。

 結果として飯田さんは、「都心からアクセスがよく、資産価値の高い自宅なら売り急ぐ必要はない」とアドバイスする。 ただし、次のような物件については注意が必要だという。

「住民の高齢化が進んでいる、立地のあまりよくない大規模の分譲団地や分譲マンションです。早めに売却しないと、ここ数年の“不人気”がコロナ禍で加速するリスクがあります」(飯田さん)

(ライター・森田聡子)

週刊朝日  2020年9月11日号

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