大阪桐蔭以外の現役NPB選手が多い高校を見ても横浜は松坂大輔、涌井秀章、柳裕也、広陵は吉川光夫、野村祐輔、有原航平とエースクラスのピッチャーを輩出している。これを見るとやはり大阪桐蔭は野手偏重だと感じるのは自然なことと言えるだろう。

 その背景として一つ考えられるのが大阪桐蔭は比較的早い段階から複数の投手を起用して戦ってきたという点だ。2012年に春夏連覇を達成した時も藤浪という超高校級の投手がいたが、二番手の沢田の存在も非常に大きかった。また2018年の春夏連覇の時も柿木、横川、根尾昂(中日)の三人を上手く起用して戦っている。彼らももちろん能力の高い投手であることは間違いないが、一人の投手を前面に出さずに攻撃力と高い守備力で勝てるチームを作り続けてきたことが影響しているとも言えそうだ。

 もう一つ考えられるのは、投手は後からの伸び率が大きいという点だ。昨年のプレミア12の侍ジャパンの投手陣を見ても岸孝之(楽天)、今永昇太 (DeNA)、中川皓太(巨人)、嘉弥真新也(ソフトバンク)などはいわゆる強豪校出身ではなく、現在日本のエース格の一人である千賀滉大(ソフトバンク)も愛知県の県立高校出身である。

 千賀は高校からプロ入りしているが育成選手での指名であり、他の4人は大学や社会人で成長してプロ入りを勝ち取った選手である。大阪桐蔭にも中学時代に評判となった投手は当然多く入学してきているが、意外に完成された投手が多く、そこから“大化け”するようなケースは少ないとも言えるだろう。

 ただ、そういう投手たちはプロで活躍するほどのボールの凄さはなくても、投手としての能力は決して低くはない。福島由登(Honda)、福本翼(東芝)、葛川知哉(トヨタ自動車)、平尾奎太(Honda鈴鹿)など、社会人で主戦として活躍している投手を多く輩出しているところに、決して投手指導のレベルが低くないということは表れている。

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今後、“野手偏重”の流れが変わる予感も…