「キャラ変以外でも、2017年にGReeeeNとコラボした楽曲を発表したり、『ドラゴンボール超』や『ゲゲゲの鬼太郎』(ともにフジテレビ系)の主題歌を手掛けるなど、キッズ層にも人気が浸透していったんです。これまでの演歌歌手のイメージからポップ歌手としても評価されえるようになったことも大きいのでは。フジテレビの『FNS歌謡祭』などにも返り咲いて出演していますよね。純烈がわかりやすい例で今歌謡曲テイストのアーティストは根強い人気となっているんです。過去の曲もYouTubeなどで見られるので、年代に関係なく受け入れられているようです。氷川さんの場合は、振り切れている感じがパフォーマンスにも乗っていて、好感を持って受け入れられているんじゃないでしょうか」(音楽レーベルスタッフ)

 演歌界のプリンスとしてその座を守り続けざるを得なかった氷川だが、長らく抱え込んでいたものが晴れて、それが自然と幅広い世代へと伝播したという感じだろうか。

「2014年にはマネージャーへの暴力騒動などもありましたが、そうした記憶も忘れられ、本人も反省から吹っ切れて現在の形になったようです。正直に言えば氷川さんは天才というよりは、努力の末の秀才という感じ。声もルックスもいいですが、即興に対応できるような歌唱力はもともとなかった。そこを長い努力で克服したんだと思います。取材する側の女性記者たちにもファンは多く、『吹っ切れた一面がかわいい』ともっぱらです」(前出の記者)

 TVウォッチャーの中村裕一氏は、そんな氷川の今後についてこう分析する。

「昔からのファンはともかく、デビュー曲の『箱根八里の半次郎』や『きよしのズンドコ節』くらいしか知らなかった人は、まさに『ドラゴンボール』のスーパーサイヤ人のごとく覚醒とパワーアップを果たした彼の姿にきっと驚いたことでしょう。しかし、いろいろと窮屈な今の時代において、自分を開放して伸び伸びと歌い上げるその表情は実に生き生きとしており、新しい彼を見て勇気をもらったり、感動した人も決して少なくないはず。もちろん、それもこれまで演歌歌手として築いてきた確かな実力と実績があるからこそ。加えて“限界”を突破した彼は表現者として新たなステージに立ったわけで、まだまだ無限の可能性を秘めている。他にはいない唯一無二の存在として、新しい時代をガンガン突き進んでほしいですね」

 演歌界というレガシーな業界のイメージを背負ってきた氷川だが、時代の変化にうまくあわせて自分を開放できたようだ。そしてその結果、新たなファンを獲得した。今後も老若男女問わず愛されるアーティストになっていきそうだ。(黒崎さとし)