今年7月に開かれた控訴審第1回公判では、弁護側は「一審は夫の心理的DVの影響を過小評価し、重すぎる」として量刑不当を主張、懲役5年が相当としていた。

 しかし、先の若園裁判長は、約30分にわたる判決理由の中で、

「(優里)被告は雄大の心理的影響があったとしても、結果的に雄大の意向を容認したことになる。被告は深く悔やみ反省していることを考慮しても、最終的に自分の意志に従っていたといわざるを得ない」

 などと述べた。

■支援を求められない社会システム

 判決を受け、DV被害者の支援団体「エープラス」(東京都)代表理事の吉祥眞佐緒(よしざきまさお)さんは、

「この夫婦の関係性の中で、母親が一人で子を守ることは難しい」

 と指摘。問題は、母親が支援を求められない社会システムにあり、母親に責任を押し付ける司法にあるという。

「心理的に支配されていた母親にその役割を求めること自体、司法がDVを理解していない証拠。行政などの支援機関も、母親がどうして支援を受けられなかったのかを考えてほしい。制度や法律が1日も早く被害者と子どものために運用されることを望みます」(吉祥さん)

 裁判を傍聴した、自らも夫のDVに苦しめられた経験があるという都内在住のシングルマザーの30代女性はこう話した。

「夫に逆らえなくなったという、優里被告の気持ちもわからなくありません。でも、子どもが亡くなったことを重く受けて止めてほしい」

 過ちは、誰でも起こし得る。その過ちとどう向き合うか優里被告にも問われることになる。結愛ちゃんは、生きていれば小学2年生だった。(編集部・野村昌二)

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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