「安倍さんにとっては石破さんが怖いんですよ。二階さんにその気はまったくないが、石破さんに接近したように見えるというのは安倍総理にとっては牽制になる。二階さんと石破さんが組んで、万が一にでも、石破政権が誕生したら、モリカケ(森友・加計)問題や『桜を見る会』の疑惑を蒸し返される。石破さんは9月1日の会見で、モリカケの再調査を『必要ならばやる』と、堂々と発言してますからね。森友問題の際の公文書改ざんを苦にして自殺した元近畿財務局の職員の妻も、抗議している。それは安倍さんにとって一番、ストレスの原因になるし、妻の昭恵さんとの関わりも追及されますからね」

 総裁選は国会議員票394票と都道府県連代表票141票の535票の行方で決まる。フルスペックの総裁選ではなく、地方票を大きく削られたことから、「石破潰し」とも報じられた。

「フルスペックの総裁選をやれば、石破さんが勝つと信じるのは間違い。石破さんの人気を支えてくれたのは実は皮肉なことに安倍さんなんです。石破票というのは安倍批判票だったんですよ。その安倍さんがいなくなったら、かつてのように地方票も集まらないでしょう。あまりに地方票が集まらないようだと、石破さんは苦しくなる」

 二階氏や菅氏と距離があると思われた麻生氏も、9月2日、細田派会長の細田博之氏、竹下派会長の竹下亘氏と3人で合同記者会見を開き、『菅支持』を表明した。だが、この会見は二階氏には声がかからなった。

「麻生さんが菅支持に回ったのは、自民党主流派が反主流派に転落する怖さをよく知っているから。このまま岸田さんで走ったのでは、菅政権発足後、菅さんと二階さんに人事権やポストを握られてしまい、好き勝手にやられると思ったから反撃に出たのだろう。外された二階さんはカンカンですよ。自分が一番槍で走って、菅政権を誕生させたのに後からやって来て大きな顔をしてという思いでしょう。自民党内の内紛勃発ですね」

 すでに、閣僚ポストのぶん取り合いが始まっている。

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「短期政権にならない」と大下氏が考える理由