最長政権が終わりを迎える。親米のイメージが強い安倍政権だったが、実は中国との関係も重視していたという。AERA 2020年9月14日号では、軍事ジャーナリストの田岡俊次さんが安倍政権の防衛・安保政策を振り返った。
【写真】中国の尖閣上陸を念頭に置いた離島奪還訓練を行う自衛隊員と水陸両用車
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退陣表明した安倍晋三首相は憲法改正への執着や集団的自衛権行使に関する憲法解釈の強引な変更、トランプ米大統領への露骨な機嫌取りなどから「対米追従一筋のタカ派」とのイメージが強いが、実は中国との関係を重視し、次々と行動してきた。
2006年9月26日に最初に首相に就任した直後、10月8日にまず北京に飛び、胡錦濤主席らと会談し「戦略的互恵関係」の構築で合意。日中の経済関係は急速に拡大したが、翌07年9月に持病のため辞任。民主党の野田佳彦内閣が尖閣諸島を国有地化したことなどで日中関係は一挙に険悪化したものの、12年12月に首相に返り咲くと中国要人と親交の厚い福田康夫元首相らを頼りに日中関係修復をはかり、14年11月10日、北京で習近平主席と約3年ぶりの日中首脳会談にこぎつけた。
合意文書では「双方は尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していることを認識」し、戦略的互恵関係の発展を目指すとした。両方のメンツを保つためのあやふやな言辞だが、「問題は棚上げにして和解をはかる」という外交政策の一致は明白だ。
その後安倍首相は中国の「一帯一路」構想への賛同を何度も表明し、今年には習近平主席を国賓として招いて日中関係が完全に軌道に乗ったことを示す計画だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で頓挫した。
■「尖閣戦闘」は敗北濃厚
その半面、両国は競って巡視船を増強し、日本は陸上自衛隊「水陸機動団」を18年に創設。垂直離着陸輸送機「オスプレイ」や水陸両用装甲車、軽空母、地対艦ミサイルなどを配備して日中戦争に備えようとしている。首尾一貫しないようにもみえるが、近隣諸国との友好を深めて紛争を避けつつ、防衛力を示して他国による安易な攻撃を防止するのは安全保障対策の定石とも言える。