そして、すぐ次回作に取りかかって下さい。絵は何点か出来たら、並べて見て下さい。そしてスタッフに批評させると、勝手なこと言いますが、その批評が次の作品を産みます。何点もできると、そこに自然に物語が生まれます。そうして生まれた物語を短篇にすれば一挙両得です。
ここまで書いた時に、セトウチさんとマナホ君のツーショット写真が届きました。2人して同じ絵を描いているのは双児のロッテですね。セトウチさんもマナホ君も外面は元気です。マナホ君の内面(絵)も元気。背景に黄色の点々、装飾的でファッショナブル。こうして比べるとセトウチさんの内面は優しいです。セトウチさんも絵描き仲間ができて、励みになりますね。セザンヌとピサロは師弟関係で2人でよく同じ絵を描いていました。そんなことをふと思い出しました。
そこへ再び第二弾の絵の写真が届きました。一段と進化しています。荒々しい大胆なタッチ。これでいいのです。周囲の塗り残しなんて、コシャクなと言いたい。
次回を楽しみにしています。
■瀬戸内寂聴「イッヒッヒ! 秘めたる夢は遺作展」
ヨコオさん
何と暑い夏の終わりでしょう。昔、昔、私は「夏の終り」という題の小説を書いて、小説家の名乗りをあげました。あれは幾歳の時だったかしら? 調べてみたら、何と五十八年も昔のことでした。つまりほぼ六十年間も、私はペン一本にすがって生きてきたことになります。
大方、一世紀も書き続けて、さすがにくたびれはてました。
ヨコオさんのおすすめで、最近、油絵を描きはじめて、気分が少し若返ってきました。
毎日、秘書のまなほが、帰りぎわに、
「明日も絵を描きましょうね!」
と、気合をかけて帰ってゆくので、ついその気になって、そうだ、明日は何を描こうかと、胸が少しときめいてくるのです。
これまで水彩画は、寂庵で絵の先生を迎えて、しばらく描く会をつづけたので、私も参加して、たのしみましたが、油絵は一度も描いたことがなかったのです。