AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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1995年に短編映画を共に手掛けて以来、コンビで映画を作り続けるエリック・トレダノ監督(49)とオリヴィエ・ナカシュ監督(47)。首から下がまひした富豪の白人男性と、彼を介護する貧しい黒人男性の関係をユーモラスに描いた「最強のふたり」(2011年)の大ヒットで、一躍世界から注目される映画監督になった。
その二人の新作が「スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~」だ。自閉症患者を支援する団体を運営するブリュノ(ヴァンサン・カッセル)と、その団体で働く社会からドロップアウトした若者たちの独立を支援する団体を運営するマリク(レダ・カテブ)を主人公に、社会から弾き出された、居場所のない若者たちのために奔走する二人の姿を描く。
トレダノ監督は、「『スペシャルズ!』にはこれまで自分たちが作ってきた作品やアプローチしてきたテーマが全部詰まっている」と話す。そもそも本作を作ろうと決意したのは20代前半。相棒のナカシュ監督と、本作のモデルになった二人に出会い、彼らの活動や人間性に感動。いつか二人の活動を映画にすることを誓ったという。
「『スペシャルズ!』は今だからこそできた。映画は一本撮るごとに学んでいくもので、言語を学ぶようなもの。練習しなかったら上達しないのと同じで、僕も映画という言語を磨いて学んで撮ってきたことで、この複雑な、重度の自閉症というテーマをフィクションとして作るのにどうとらえたらいいか、わかるようになりました」
撮影準備に2年。映画に登場する自閉症の人々は実際の自閉症の人々を起用。パリにある関連団体を徹底的に探し、医師や専門家からは「彼らと時間を一緒に過ごすことが何より大切」と教えられた。
主要キャストで自閉症のジョゼフを演じたベンジャミン・ルシューは、自閉症のアートグループに通っていたが、そこで監督たちが開いたワークショップに1年参加してキャスティングされた。彼らの起用で社会の問題がよりリアルに、身近に感じられる。