「メシが食える大人」に育てる――27年前から一貫してそう言い続けているのが、「花まる学習会」代表の高濱正伸さんだ。遊びや野外体験を通じて子どもを伸ばす、一風変わった学習塾を開いた当初、「そんな塾は成立しない」と非難された。しかし時代は変わった。従来の教育にとらわれない学校が生まれ、そのような学校を選ぶ人も増えた。木村智浩さんもそんなひとりで、自由教育を実践する「きのくに子どもの村学園」にわが子を通わせている。現在発売中の『AERA English特別号 英語に強くなる小学校選び2021』(朝日新聞出版)ではそんな二人が、真に子どもを伸ばす教育について、語り合った。
* * *
木村:うちの子が通うのは、テストも宿題もチャイムもない小学校です。基礎学習の時間も週に数時間はあるのですが、授業の大半は「プロジェクト」と呼ばれる活動に充てられています。
高濱:プロジェクト?
木村:おもしろいんですよ。劇団や建築、昔生活など五つほどのプロジェクトがあり、そのどこかに所属して1年間活動するんです。
高濱:お子さんは何を選択したの?
木村:去年は料理のプロジェクトを選択しました。作物を育てたり、調理道具を一から作ったりもします。その過程で、漢字も計算も地理も化学も自然に学んでいるんです。
高濱:それこそ教育の本質だね。木村さんもよく理解している。
木村:いえいえ。ぼくはもともと、大人が理想と思う学びの場を子どもに提供すれば優秀な子に育つと思い込んでいたんです(笑)。でも子どもの幼児期にモンテッソーリ教育を経験して、「大人が主導権を握っているうちは、子どもが主体的に学ぶことはできない」と知りました。
高濱:プロジェクトは完全に子ども主導で行われているの?
木村:はい、先生は見守る立場。
高濱:私の塾のサマースクールも完全に子ども主導型。でも、好きなように秘密基地を作らせたりすると、親からクレームがくる。「うちの子の基地はショボイ。なんで作り方を教えてくれないの?」って。でもね、子どもにとってこれがベストで最高なの。これでいいの(笑)。