「私への愛はストーカーのよう」。母親の愛情をこう表現するエッセイストの小島慶子さん。一時は摂食障害や不安障害にもなったという自身の経験を明かす。
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母は無邪気で感情表現が下手な人。たとえばかわいい雀(すずめ)を見つけて「うわぁかわいい」と、ぎゅっと握りしめて殺してしまうような。私への愛はストーカーのようで、テレビに出ている娘と、自分自身との区別がつかないのかも。私の出演した番組の感想を(当時)感熱紙のファクスが束になるほどの長文で送ってきたこともありました。
あえて言うなら私は母にとって愛玩動物みたいなもの。ペットです。彼女の一部ではないのに。そんな葛藤を抱えて育ちました。母との関係に苦しむあまり、摂食障害や不安障害にもなりました。
母は自分がこうだ、と思うようにしか物事を理解できないために、会話になりません。母にとっては、自分自身か敵かの2種類の人間しか存在しないので、「慶子は敵なの、それとも私なの?」。
他者を持たないのです。(私は私。そろそろ私を発見してくれないかな)。そんな思いでずっと生きてきました。
結婚し、2人の子どもに恵まれました。
娘が生まれるのが怖くて神仏に祈りました。娘が生まれたら、自分と母との関係を重ねてしまうかもしれないという不安があったからです。