その数日前、職員の天下り問題で辞職して4カ月が過ぎていたが、文科省の幹部を通じて官邸側から前川さんに接触があった。
「和泉(洋人・首相)補佐官が『会いたい』と言ったら、対応されますか」
菅氏の懐刀と言われる官邸官僚。前川さんは当時、過去の出会い系バー通いについて、読売新聞から取材をかけられていたという。和泉氏との面会には応じず、翌朝、記事は出た。接触は取引のためだったと思った。信用はさらに傷付いた。前川さんは、菅氏の差配の可能性を考える。その菅氏について、前川さんはこう評する。
「権力の維持や拡大のためには手段を選ばない人」
菅氏側からみれば、安倍政権の負の遺産をいかに放置し続けたままで評価を上げていくかが課題になる。政治評論家の伊藤惇夫さんはこう解説する。
「実利を与えるような政策がうまくツボにはまれば、それなりの評価を受ける可能性はあります。懐が豊かになる人たちがどれだけ増えるかです。それが今後、総理としての菅さんの評価につながるでしょう」
だがその前に菅氏は、負の遺産のたなざらしにどれだけの国民が納得しているかも見極める必要があるだろう。(編集部・小田健司)
※AERA 2020年9月28日号