9月16日に誕生した「菅政権」。モリカケや桜を見る会などの問題の責任の一端を負う菅氏は、これらの安倍政権時代の「負の遺産」にどう向き合うのか。AERA 2020年9月28日号の記事を紹介する。
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「誰かが出馬してこの国難を解決しなければならない」
9月8日、東京・紀尾井町にあるホテルニューオータニ「鶴の間」であった総裁選の出陣式で菅義偉氏はこう力を込めた。
「鶴の間」は2019年4月12日、安倍晋三氏が「桜を見る会」の前夜祭に使った宴会場だ。1人5千円という安すぎる会費に「安倍氏側が補填したのでは」との疑惑がなお残る。負の遺産を含めた「継承」を象徴するかのような一場面だった。
指摘は当たりません──。安倍政権下の数々の疑惑にそんな言葉を繰り返し、記者や国民に無力感を味わわせてきた菅氏が、負の遺産にどう向き合うか。桜を見る会や森友学園の疑惑を追及している神戸学院大学の上脇博之教授は「菅氏はこれからも変わらないだろう」と言う。
森友学園問題では、財務省が公文書を改ざんしたことが18年3月に発覚。その後も公文書の不適切な管理は続いた。桜を見る会では、内閣府が昨年11月に国会へ提出した推薦者名簿の一部を隠す加工をしていた。
「森友問題で反省したのなら、内閣府で問題が起きるはずがありません。さらに招待者名簿はすべて破棄されたといいます。菅氏が改善しようと動いていないのは明らかです」
■権力維持に手段選ばず
菅氏は日々の会見で、安倍政権への追及をかわす役割を果たしてきた。安倍氏の「お友達優遇」が疑われた加計学園問題で、すでに辞職していた元文部科学次官の前川喜平さん(65)に対して、官房長官の立場から異例の個人攻撃を仕掛けたのも菅氏だった。
17年5月、獣医学部が設置された経緯について前川さんは個別のメディアの取材を受け、「総理のご意向」と書かれた文科省作成の文書の存在を認めた。すると菅氏は「地位に恋々としがみついた」などと発言し、前川氏の社会的信用を傷つけた。