よい仕事をしてくれる協力会社とは長い関係を結ぶ。いたずらに値引きは求めず、手間をかけたらかけただけちゃんと支払うのは、相手の仕事への敬意があるからだ。会社を始めた頃「若いブランドを応援しよう」と助けてくれた会社の工場が火事で全焼した時には、迷わずお金を貸した。
「利益を求めず助けてくれたのだから、してもらったことを自分がしただけです」
皆川の会社では、87歳のスタッフもいる。従業員にはできるだけ長く働いてもらいたいという。新型コロナでの休業期間に通販サイトを充実させたら、前年比で全社の売り上げが伸びた。低迷する業界では際立つ成果だろう。
「低迷していたのは、アパレルという産業がダメなんじゃなくて経営の仕方に問題があったから。今回、気づく機会を与えられたんだからマインドが一斉に変わればまだまだ変われると思いますよ」
優れたビジネス書としても読める一冊である。(ライター・千葉望)
■八重洲ブックセンターの川原敏治さんオススメの一冊
『フードテック革命 世界700兆円の新産業「食」の進化と再定義』は、身近な食の業界から、コロナ後の課題を見通すことのできる一冊。八重洲ブックセンターの川原敏治さんは、同著の魅力を次のように寄せる。
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小売り、飲食など身近なものから、農業、工場、それに関わる技術開発など食に関するビジネスは多岐にわたり、我々が日常触れない日はない。そんな食に関するビジネスやその技術、さらに話題の健康志向やパーソナル志向への対応からコロナ後の新たな課題であるデリバリーや非接触化の問題まで、各業界の事例や豊富なインタビューとともに、余すことなく紹介。身近な小売りや飲食店などの話も多く、濃く読みやすい内容となっている。
身近な上に、さまざまな業種が含まれる業界だからこそ、コロナ対応を含めて日本が抱える課題が見えやすい。我々の日常や、他の業界に当てはめて考えることもできる。
食の業界、フードテックのことを知るのはもちろんだが、それを通じてコロナ後の課題や未来も見通せる一冊になっている。
※AERA 2020年9月28日号より