釜山アジア大会を終えた02年秋、JISSの会議室に「チーム北島」のメンバーが集まって、2年後のアテネ五輪に向けた強化方針について話し合いました。どこの筋肉を鍛えたらいいのか、高地トレーニングはどのように行うかなど、私が座長になって様々な分野の専門家に一人ひとり発言してもらいました。強化計画を示し、意見を聞いた上で、こういう協力をしてください、とお願いしました。「北島に金メダルを取らせる」という思いが集まって、アテネ五輪で大きな実を結びました。
「チーム北島」をモデルケースとして、文部科学省は様々な競技のメダル獲得に向けたサポート体制を充実させていきます。08年にはJISSの横に味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)ができて、競技の支援体制はこの20年で大きく前進しました。
大事なのはサポートを利用する選手、コーチ側に「こうしたい」「こうしてほしい」という強いニーズがあることです。「あるから使う」という消極的な姿勢ではサポートは生きてきません。サポートしてくれる人たちの能力を引き出す現場のコーチや選手の度量、スキルも必要です。サポートをする人が思い切り仕事ができる場を作ることも大切だと思っています。
(構成/本誌・堀井正明)
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数
※週刊朝日 2020年10月2日号