安倍晋三元首相の電撃辞任に、菅義偉内閣の発足。この1カ月で、永田町は大きな変化に見舞われた。政治家だけはない。安倍氏のモノマネで人気を博してきた芸人・ビスケッティの佐竹正史氏もまた「変化」を強いられている。おはこだった安倍氏のネタはどうするのか、後継となった菅首相のモノマネはどこまでできるのか。本人に直撃した。
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東京・新宿の吉本興業の会議室。佐竹氏は、メーク道具と安倍スーツを携えて取材現場にやってきた。
「10分あれば、安倍さんになれますよ。7年以上やってきましたから」
その言葉通り、慣れた手つきで着替えやメークをこなしていく。ファンデーションで下地を整え、ペンでしわを書き、粉をはたいていく。瞬く間に「安倍晋三」に変貌を遂げた。
主に安倍氏のモノマネで仕事をしてきた佐竹氏にとって、突然の首相辞任は痛手と言える。実際、安倍氏の辞任を受けて、テレビなどの仕事が10本ほどキャンセルになった。
早く次の「ネタ」を探さなくては死活問題になる。9月には自民党総裁選が始まった。有力候補として菅氏をはじめ、岸田文雄氏、石破茂氏の名前が浮上。佐竹氏は各候補者を観察し、次のように語る。
「石破さんは癖があるので、安倍さんの研究をしていた流れで、自然と習得できそうでした。岸田さんは他と比べると癖がなく、パワーワードがないので、どうしようかなと悩みどころでした」
菅氏についてはメークの技術が向上していることもあって、
「顔まねはいけるだろうなと。ただ、しゃべりかたについては、一朝一夕ではいかないだろうなということも頭をよぎりました」
しかし、モタモタしていると他の芸人にも先を越されてしまうかもしれない。「やれるだけやってみよう」。9月8日、インスタグラムに恐る恐る菅氏の顔まね写真を投稿してみたところ、450件を超える「いいね」がつくなど、予想以上に好評だった。
「『もっと髪を薄く』『目を小さく』といった、けっこうむちゃなアドバイスもいただきました(笑)」