3.11以降、原発の是非が議論され、代替エネルギーが注目されている。宇宙航空研究開発機構(JAXA)主任開発員の藤田辰人氏(45)は「宇宙太陽光発電」の有用性について語る。

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 宇宙空間に太陽光パネルを広げ、太陽のエネルギーで発電した電気を、ビームで地球に送る。2030年代にはそんな「宇宙太陽光発電」が実現しているでしょう。

 宇宙太陽光発電は、地球上の太陽光発電と違い、昼夜で発電量に差がなく、天候にも左右されません。ほぼ24時間365日、フルパワーで発電できるのが特徴です。無限の太陽光エネルギーを利用できる究極の自然エネルギーです。計算では、地上での太陽光発電と比べて、5~10倍程度の太陽光エネルギーを得ることができます。

 JAXAは2030年代に、原発1基分に相当する100万キロワットの発電システムを、「ひまわり」などの静止衛星が回る高度3万6千キロメートルの軌道上に建設する構想を検討しています。

 システムは巨大です。太陽光パネルは直径1.25キロメートル、電気を送るアンテナは全長1.8キロメートルにもなります。重さは全部で1万トンから2万トン。一方、地上で受けるアンテナは直径2キロメートルの大きさになります。

 電気を宇宙から地上にどう送り、受けるかがカギになりますが、マイクロ波またはレーザーのビームを使います。マイクロ波とは、携帯電話やテレビ放送などに使われている電波です。宇宙で電気をマイクロ波に変換し、地上で受信したマイクロ波を再び電気に変えれば、家庭のコンセントでも使うことができます。この変換技術はすでに確立しています。

 日本は資源の少ない国ですから、自前のエネルギーを持つことが求められています。宇宙太陽光発電は政府の「宇宙基本計画」に盛り込まれており、国の政策に基づいて進められています。

週刊朝日 2013年1月18日号