今月、ミュージカル「恋と音楽」を演出し、自ら出演する河原雅彦氏が日本国内でのミュージカルの現状を語った。

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 一般にミュージカルと言うと、タモリさんの「どうも不自然で性に合わない」的な発言に代表されるように、観る側に多大な違和感を与えてしまう印象がはびこっているような。

 芝居の心情に合わせて役として歌い出すならまだしも、終始、「そんなやつぁいない!」と叫びたくなるほどのいい声で演技をしつつ、音楽が鳴った途端、突然、人が変わったような美声を轟かされても普通に戸惑っちゃいますよね? おまけにべ夕な日本人顔した俳優 に、アンドリューやらサンドラやら外国人気取られても……。これじゃ、ジャイアンリサイタルに行った方がジャイアンのご機嫌が取れる分、いいんじゃないかって気分になっちゃう。

 けどね、ブロードウェイを始めとする世界中の劇場で愛されている舞台の多くがミュージカルである事実は動かしようも無く、演劇の中に歌や踊りが混在するこの演目は、本来、とても自由で豊かな素晴らしいエンタメなわけですよ。じゃあ、どうしたら日本でもっとミュージカルを楽しんでもらえるのか? まずは先にも述べた違和感を取り除くことなのですが、残念ながら人材不足だったりするのが実情。外国なんかで観る素晴らしいミュージカル俳優達は、役に合わせた自然な演技も、歌と踊りも完璧ですから。厳選なるオーディションで優秀な俳優達を集め、時間とお金をかけて作っているのでエンタメとしての質がまるで違う。

 これに対抗するには、既成の外国作品を手っ取り早く上演するんじゃなくてね、まずは日本人の気質に合った和製オリジナル・ミュージカルをバンバン作っていくことですよ。どの国と競ってもアイディアとオリジナリティだけは引けをとらないですから、我が国は。

週刊朝日 2013年1月18日号