■役割を全うすればOK

 シナリオのプレイ時間は3~4時間で、人数は6~10人、参加費4千円程度が平均的。店舗ではゲームマスター(進行役のスタッフ)がつき、物語世界への案内人となってくれる。

 マダミスファンの中には、より世界観を楽しむためにコスプレしたりドレスコードを設けたりして楽しむ人もいるという。

 店舗で遊ぶタイプの他に、パッケージとして市販されているタイプのマーダーミステリーもある。友人たちと集まる機会に記者もトライしてみた。

 初めてのため探り探りだったが、「パッケージで楽しむコツは全員がマニュアルをしっかり読むこと。一文読み落とすだけでゲームが成立しないこともあります」という酒井さんのアドバイス通り、ルールブックを丁寧に確認しながら進め、なんとか物語を楽しむことができた。

 記者に与えられたキャラクターは「大学生の女性」で、もっと役になりきって演技をしなければいけなかったかと反省したが、

「ロールプレイはアクティング(演技)とは違います。雰囲気を出すために演技の部分を楽しむ方もいますが、“役割”を全うしてもらえれば大丈夫。例えば犯人の恋人役なら、犯人が捕まらないように協力するのが役割ですから『私は犯人を知りません』と言うだけで十分。『この人が犯人です』と言ったらそれは役割を放棄していることになります」(酒井さん)

 推理ゲーム上は騙す側と謎を暴く側に分かれていても、「その物語を作りあげる」という意味では、全員の協力が必要なマーダーミステリー。勝ち負けを楽しむだけではない、1回限りの体験の共有こそが、この娯楽の魅力なのかもしれない。(編集部・高橋有紀)

AERA 2023年2月6日号

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