「心配しているのは、安倍(晋三)さんが首相だった当時、『感染者は増加していますが、重症者は少ないから医療体制は逼迫(ひっぱく)していません』とくり返していたことです。医療現場の実情をまったく理解していない。
都のデータを見ると、7月下旬からコロナの入院患者数が1千人以上の状態が70日も続いています。毎日、かなりの人が退院して、一部の人が亡くなるのと入れ替わって、新たな患者さんが入院してくる。医療現場は毎日、患者さんに持病を聞いて対処し、感染防御でも気を使っています。そういう状態がずっと続いているわけです。
現場の疲労度は肉体面でもメンタル面でも大きくなっています。そこへ再び感染拡大が起きれば、本当に医療崩壊が起きかねない。政府はあまりにも危機感が無さすぎます」
――第2波の感染源として新宿・歌舞伎町などのホストクラブやキャバクラ、いわゆる“夜の街”が批判の対象にされました。
「まずは感染者を責めるような雰囲気をなくし、休業要請については、業者を粘り強く説得する姿勢が必要です。そのうえでコロナ対策の法律を改正して、十分な補償を伴った強制力のある休業要請ができるようにしなければなりません。従わなければ罰則がある。そうすれば抑止力となり、実際に罰則を適用するまでもなく、ほとんどの業者は守るのではないでしょうか」
――10月1日から、GoToトラベルは東京を発着する旅行も加わりましたが、感染が全国に散らばる恐れはないでしょうか。
「みなさん、無症状だったり、ちょっと風邪気味だったりしても旅行に出かけてしまうでしょう。岩手県や青森県のように感染者が極めて少ないところの住民は、免疫がありません。しかも、医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な場所へ、東京の人がどんどん出掛けて行くと怖い。同時に、外国人の入国制限もビジネス関係を対象に緩和しています。国には具体的な感染症対策を講じながら、責任を持って経済を動かしていくという姿勢が見えません。感染者が減ってきたからもういいのではないかと、安易に動かしているように思えます。GoToの行く末は、もうしばらく様子を見ないとわかりませんが、大変な事態になるのではないかと懸念しています」