──トランプ氏が敗北しても認めず、民主主義の原則に従わない可能性を心配していますか。

 もしそうなれば人々がホワイトハウスに行って彼を引きずり出します。この可能性は若干誇張されていると思います。確かに、郵便投票の多さのせいで、投票日にも確かなことがわからない可能性はあると思いますが。

 接戦の判定を争うこと自体はまったく正当なことです。私自身、ブッシュ対ゴアの選挙戦ではフロリダ州でちょうど1カ月過ごしました。あの時は1州のみでしたが、今度は複数の州で起きる可能性もある。

 問題なのは、投票結果が接戦だった時に再集計を求める正当な権利の行使ではありません。トランプが選挙全体をむしばみ、「私が負けたとすればそれは不正があった場合だけだ」といった問題発言をした場合です。実際にはすべての票が公正に集計されても彼は負ける可能性があり、ひどく劇的な敗北もありうる。

 そうした懸念はトランプの性格に根ざしていると理解できます。でもまだ事実抜きに過剰反応すべきではないでしょう。

■トランプ政権の逸脱ぶり記録に価値

 トランプ氏はこのインタビュー直後にあった第1回討論会で、罵詈雑言と不規則発言を終始繰り返し、自分で決めたルール以外には従わない姿勢を改めて鮮明にした。

 そしてコロナ禍を軽視してきたトランプ氏自身がコロナに感染するという、ボルトン氏すら予想していなかった「オクトーバー・サプライズ」が飛び込んできた。

 大統領選はなお視界不良だが、トランプ氏再選の成否にかかわらず、その政権1期目の歴史的な逸脱ぶりを記録した書として、『ボルトン回顧録』の価値は高まりそうだ。(朝日新聞論説委員・梅原季哉)

週刊朝日  2020年10月23日号より抜粋

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?