──彼のファザー・コンプレックスが影響して、あなたへの賛美と憎悪の間を揺れ動いたようにも思えてしまいます。
そうかもしれません。ただ、そうした事象を取り扱うのは、メアリー・トランプ(トランプ氏について身内としての暴露本をこの夏出版したトランプ氏の姪)に任せます。彼女は臨床心理士だから。でも、明らかに私がすべきことじゃない(笑)。
──本の原題「それが起きた部屋」(The Room Where It Happened)は大ヒットしたミュージカル「ハミルトン」の一曲から借りたのですね。
「テーブルに着いている」「その部屋に入っている」といった表現は、ワシントンでは当事者性を示すためよく使われる言い回しで、あのミュージカルの曲も、それを発展させたものです。
そこに着目し、ミュージカルから借りる形で本のタイトルを決めました。あのミュージカルも曲も非常にすばらしい。意思決定過程の本質を示していると思います。
──本の中にもいろいろなポップカルチャーへの言及、例えばイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」が引かれ、乾いたユーモアもあり、あなたは意外に堅物ではない、との印象を受けました。
よかった。そのうち私の本を元にだれかがミュージカルを作ってくれるかもしれません(笑)。
──あなたが本を書いた最大の動機である大統領選が迫ってきました。自分はどちらの候補も支持しないと表明されていますが、結果はどうなるでしょう。
バイデンが優勢を保ってきましたが、米国政治を知る者には2016年のトラウマがあります。ヒラリー・クリントンが勝つだろうと、どの世論調査の数字も示していた。もちろん事後にはさまざまな説明がありましたが、選挙人制度のせいで彼女が負けたのを目にした直後には、国全体が虚を突かれました。だから今は誰もが確定的なことを言いたがらない。
短期間に非常に劇的なことが起こりうると思います。国際関係で、オクトーバー・サプライズ(10月の驚愕)と呼ばれるような、選挙の力学を変えることをねらった劇的な仕掛けが出てくるかもしれません。金正恩との新たな会談ですら、考えにくいですが可能性としてはありえます。