帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
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山折哲雄さん  (c)朝日新聞社
山折哲雄さん  (c)朝日新聞社

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「癒(いや)しについて」。

【写真】帯津さんが敬愛する宗教学者の山折哲雄さん

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【癒し】ポイント
(1)癒しほど誤解されやすい言葉はない
(2)癒しがいつの間にか受け身になってしまった
(3)自然治癒力を原点に自らが癒すことを忘れずに

 皆さんは「癒し」という言葉にどういうイメージを持っていますか。実は、癒しほど誤解されやすい言葉はないと私は思っています。

 私が提唱するホリスティック医学では、癒しが中心的な役割を担っています。1987年に日本ホリスティック医学協会が設立されたときに、ホリスティック医学の定義を掲げました。そこに次の2行があります。

「自然治癒力を癒しの原点におく」
「患者が自ら癒し、治療者は援助する」

 人間をまるごととらえようとするホリスティック医学では、人間を「からだ」「こころ」「いのち」の側面から見ていきます。このうち「からだ」については、西洋医学の<治し>の方法が有効です。しかし、「こころ」については、西洋医学的なアプローチでは不十分。「いのち」にいたっては、西洋医学は対象にすらしていないような状態です。この「こころ」「いのち」を中心にアプローチするのが<癒し>の方法なのです。

 ところが癒しと言ったときに、前述した「患者が自ら癒し、治療者は援助する」といったことが忘れられがちです。

 癒しという考え方を世の中に広めるにあたって、大きな功績があるのが、文化人類学者の上田紀行さんです。『覚醒のネットワーク』(89年、河出文庫)、『スリランカの悪魔祓い』(90年、講談社文庫)、『癒しの時代をひらく』(97年、法蔵館)といった著書を通じて、癒しの重要性を語り続けました。

 上田さんが癒しの中心に据えたのも、自然治癒力であり、自ら癒すということです。『覚醒のネットワーク』の第6章のタイトルは「私と地球の病気を癒す」というもので、「『自然治癒力』を取り戻す」「からだの中の声が聞こえてくる」「『おすがり』を超え、『自分が主役』になっていく」という内容が続きます。

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