フィギュアスケートの本格シーズンに入った。10月10日、東京選手権が開催され、今季で引退を表明している永井優香(早大)が優勝。姉妹で出場した本田姉妹は、姉・真凜(JAL)が7位、シニアデビューの望結(プリンスホテル)が12位に入り、そろって全日本選手権につながる東日本選手権へとコマを進めた。注目を集めたのは真凜のフリープログラムでの「対応力」だった。
真凜は昨年、グランプリシリーズのカナダ大会の直前、現地で交通事故に遭ってけがをした。しかし棄権をせずに滑り切った。
今回のアクシデントは、フリー本番での音源ミス。かかった音楽は、フリーの「ラ・ラ・ランド」ではなく、エキシビション用の曲、レディー・ガガの「アイル・ネバー・ラブ・アゲイン」だった。演技をいったん中断したが、気持ちを切り替えてエキシビション用の曲でフリーを滑り始めた。1分以内に演技を再開しないと失格となるからだ。
3月に滑ったきり、振り付けも忘れていたという曲に合わせて、ジャンプやスピンを即興で入れ、フリーの演技として滑り終えた。演技後のインタビューで真凜は「まだドキドキしている。ほとんどアドリブで滑りました」と振り返った。
まさに「氷上の即興劇」。ファンの間では、その対応力を絶賛する声が上がったが、米・ラスベガス在住でフィギュアスケートの振付師(コリオグラファー)の村主章枝さんは、フリーの演技を映像で見た上で、こう話した。
「普通に考えて、考えられないミス。でも、エキシビ用の音源がフリーの時間とあっていたのが幸運だったと思います。通常エキシビ用の曲は3分15秒とか3分半ぐらいと短いですから。最後のステップシークエンスに競技用の要素も入っていました。フリーとして若干練習していたのではないかと思いますね」
それにしても、アクシデントにも動じずフリーを滑りきった対応力は評価されていいだろう。氷上のアクトレス(女優)」といわれた村主さんは、真凜の可能性をどう見るのか。