古賀茂明氏
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会議で発言する菅首相(c)朝日新聞社
会議で発言する菅首相(c)朝日新聞社

 菅義偉総理は日本学術会議が推薦した会員候補のうち6名の任命を拒否し、しかも、その理由について実質的な説明を一切していない。

【写真】学術会議潰しの環境が整ったと思っているのか?

 日本学術会議法には、会員候補は日本学術会議が推薦し、総理はその推薦に基づいて会員を任命すると書いてある。そこに任命拒否を認める条文はない。菅総理の任命拒否は明らかな法律違反である。この法律では、学術会議は「独立して」職務を行うことや政府にその経費を負担させることが規定されるなど、学術会議の独立性を強く保障している。

 その原点は、太平洋戦争の過ちを心の底から反省するというところにある。学問の自由が奪われ、また、多くの学者が戦争に反対することができず、結果的に戦争に加担してしまったという苦い経験への反省から、政府による学問への介入は一切許さないという強い誓いに基づいて作られたのが日本学術会議法である。

 これは、日本国憲法がその前文で、戦争への強い反省とその過ちを二度と繰り返さないと宣言し、憲法9条でその平和主義を極限まで具体化し、さらに、思想信条の自由や学問の自由を何の留保もつけずに保障しているのと同じ根本哲学に基づいている。

 一方、自民党保守派の中には、表向きはともかく本音では、太平洋戦争の過ちを認めず、憲法の平和主義を否定する大きな勢力が存在する。彼らの基本思想から見れば、日本学術会議は存立すら容認できない機関である。だから、彼らは一貫して「日本学術会議潰し」の動きを続けてきた。

 しかし、これまでの歴史を見ると、彼らが執拗に続けてきた学術会議潰しの試みは常に失敗に終わっている。国民の良識が彼らの野蛮な思想を拒否したからだ。

 一方、根本思想の対立の他にも学術会議潰しの理由がある。それは、学術会議が、時に自民党政権の政策を否定する意見を表明することだ。学術会議の存在意義は、政府から独立し、異なる立場で多様な意見を述べることにある。政府と同じことしか言わないなら、この会議の存在理由はない。

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自民党保守派にとって、学術会議は百害あって一利なし