アルジェリア南東部イナメナスの天然ガス関連施設で起きた人質事件は、邦人10人が死亡するという最悪の結末を迎えた。アルカイダ系武装勢力は、なぜ用意周到にこの施設を襲ったのか。
もともとイスラム諸国と良好な関係を築いてきた日本が、アルカイダに名指しされたのは2003年10月のことだ。中東のテレビ局アルジャジーラが「日本へ報復する」としたオサマ・ビンラディン氏の声明を流した。その年の3月に勃発したイラク戦争で、日本は現地に自衛隊を派遣し、親米の姿勢を強く打ち出していた。
そしてその翌11月、日本人外交官2人がイラク北部で武装勢力に銃撃されて殺害された。
04年には、01年の米同時多発テロの計画段階で、アルカイダが日本国内の米関連施設に対して、旅客機をハイジャックして激突させるテロを検討していたことが、米議会の独立調査委員会が公表した報告書で発覚した。韓国に対しても同様のテロを検討していたことが報告され、米の“息のかかった”国までもが無条件で標的になりえる現実が浮かび上がった。
昨今、尖閣諸島、竹島と外交問題を抱える日本としては、さらなる親米路線の強化を図りたいところだが、それはアルカイダの次なる標的になることを意味するのではないか。
「アルカイダにとって、日本人はすでに『十字軍の一員』なんです。今後、日本人は欧米人と同様に標的にされていく」と強く警告するのは、危機管理の専門家で、アルジェリアで石油プラント建設に従事した経験もある首藤信彦・前衆院議員だ。
「かつて日本人は、米国に立ち向かった唯一の民族として、アラブ社会で尊敬されていました。ところが、イラク戦争で米国の“下請け”と化したことで、テロリストのみならずアラブの一般社会からも敵意を抱かれてしまった。今回の事件で日本が大騒ぎし、政府が『人命優先』の姿勢を打ち出したことは、アルカイダにとって揺さぶりやすい国だと思われた。日本企業は、もっと警備に資金を投資すべきです」
※週刊朝日 2013年2月8日号