
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胃の痛みなどの症状があるのに、はっきりと原因が特定できない病気がある。非常に身近な病気で、10人に1人以上が罹患していると言われている「機能性ディスペプシア」だ。慢性的な腹痛や、胃もたれなどが代表的な症状だが、決まったパターンはなく、人によってさまざま。治療法も人によって異なる。機能性ディスペプシアの治療を受けた人の一部始終を紹介する。
【写真】教えてくれたのは東海大学医学部消化器内科学領域主任教授の鈴木秀和医師
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東京都の大塚静香さん(仮名・27歳)は、食後に起きるおなかの張りを訴えて、東海大学医学部付属病院を受診した。おなかの張りを気にして、食事があまりとれず、痩せてしまい困っているという。
診察を担当した東海大学医学部消化器内科学領域主任教授の鈴木秀和医師は、受診当時の大塚さんの様子を見て、気分が落ち込んでいるような印象を受けたと話す。
鈴木医師の診断によると大塚さんは、機能性ディスペプシアという、胃または十二指腸に起きる病気だった。機能性ディスペプシアは、症状はあるのに、検査をしても器質的な病変(目に見える疾患)が見つからない疾患で、慢性的なみぞおちの痛みや胃もたれなどを呈する。
大塚さんはこれまで、同様の症状で複数の病院を受診してきた。ほかの病院でも機能性ディスペプシアと診断されていたが、そこで処方された胃酸を抑える薬などが、大塚さんの症状には効果がなく、仕方なく病院をかえてきたという。
鈴木医師によれば、大塚さんのような機能性ディスペプシアを抱える患者が、ドクターショッピングに陥ることはよくあるという。
「機能性ディスペプシアは、病態(病気を引き起こす原因や状態)の特定が難しい病気です。効く薬がすぐにわかるわけではないので、医師と二人三脚で原因を探っていくのが重要です。しかし、患者さんの中には、もらった薬が効かないと、次の医師にほかの薬をもらいにいってしまう人がよくいます」
鈴木医師は、多くの医師をめぐってきた患者には、まず休薬を提案するという。