「子どもを苦しめる教員による性暴力は、絶対に断ち切らなければいけない」

 教員による性犯罪が減らない一因とされるのが、加害者への刑罰の軽さだ。

 前出の郡司さんによれば、教員による児童生徒への性犯罪は再犯率が高く、一度逮捕されても別の自治体の採用試験を受けそこで採用されるケースも少なくない。わいせつ行為で懲戒免職となった教師が、戸籍と名前の一部を変えて再犯に至った事例もあるという。

 現行の教育職員免許法では、わいせつ行為などによる懲戒免職で免許が失効しても3年後には再取得が可能だ。文科省は8月末、期間を3年から5年に延長するよう教育職員免許法改正の検討を始めた。

 だが、「魂の殺人」とも呼ばれる性暴力に対しては、免許再取得期間の延長だけでなく、そもそも再取得できないようにしてほしいという声も多い。

■第三者委員会が調査を

郡司さんらの連絡会は9月に「わいせつ教員に教員免許の再交付はしないで」という署名をインターネットで実施。1週間で約5万4千人分の署名が集まると、文科省に提出。同時に、各公立学校のトイレと更衣室以外の全ての場所への防犯カメラの設置などを求める要望書を出した。

 同連絡会共同代表の大竹宏美さんは言う。

「1人の加害教員に対し、被害に遭う子どもは3人から4人いるといわれます。再犯すればそれだけ多くの子どもが被害に遭います。子どもの人権を守るため、初犯を防ぐ仕組みをつくるのはもちろんですが、わいせつ教員を再び教壇に立てないようにすることは対策の第一歩です」

中学3年(15)の時から大学2年(19)までの約4年間、中学校の男性美術教員から性暴力を受けていた石田郁子さん(43)は9月、文科省に、教員による児童生徒への性暴力防止の政策提言を行った。

 石田さんは、「教員による性暴力は、子どもの安全の問題だ」としてこう訴える。

「子どもの安全を第一に考えれば、わいせつ教員の免許再取得を不可能にするのは当然。さらに、教員のわいせつ行為を認定する教育委員会は処分後に教員から不当処分訴訟を起こされるのを恐れてなかなか認めようとしない問題もあるため、性被害の訴えがあれば第三者委員会による調査を義務づけることが大切。他にも、採用時に性暴力の可能性をチェックするアセスメントの導入など、文科省が率先して全国一律で行うことが重要です」

(編集部・野村昌二)

AERA 2020年11月2日号より抜粋

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野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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