女子サッカー日本代表の高倉麻子監督(写真:西森彰)
女子サッカー日本代表の高倉麻子監督(写真:西森彰)

 来年の夏に開催が延期された東京オリンピック。地元開催で活躍が期待されるなでしこジャパンのロードマップはどのようになっているのか。昨年の女子ワールドカップとそれ以降の戦い、また来年の五輪へ向けたチームの再編成まで、高倉麻子監督に話を聞いた。

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 まず、大きな世代交代を経て臨んだ、昨夏の女子ワールドカップ・フランス大会を振り返っておこう。この大会ではケガなどの理由でコンディションを崩していた選手も多く、仕上がりが遅れた。形が出来上がったのはフランスに入ってからだったが、グループリーグを戦いながら、チームは完成度を増していく。

 ベスト16のオランダ戦では、攻守に日本らしさが表現された。前半は相手の攻勢を1失点で耐え、選手交代でリズムを変えると、攻め疲れの見える相手に波状攻撃をかける。レンヌのスタジアムに来場した観客からも、日本の選手が織りなすパスワークに、大部分をフランス人が占めたレンヌの観客席からは手拍子が起こった。終了直前のPK献上(このジャッジも微妙だった)で敗れたが、内容は完全な勝ちゲームだった。

「トレーニングの内容、選手のパフォーマンスを見て、もちろん、難しいところであるけれども、ギリギリのところで上に上がって行けるのではないかという思いがありました。グループリーグの3試合では、非常に苦労をしましたけれども『オランダ戦から行くぞ』と。普段通り、焦らずに、後半はカードを切るタイミング考えながら、延長戦まで戦い切って勝ちきるぞという思いでした。あの一撃で負けてしまって、選手がいちばんつらかったと思いますけれども、私自身もシャッターを閉じてしまったような感じでした」(高倉監督)

 敗戦だけをクローズアップして、自信を失う必要はない。指揮官は「決して、下を向くだけの大会だったわけではない」と選手に語りかけた。そして、10月のカナダ戦(〇4-0)、続く南アフリカ戦(〇2-0)で連勝を飾ると、年末に釜山で行われたEAFF E-1サッカー選手権でもチャイニーズ・タイペイ(〇9-0)、中国(〇3-0)、韓国(〇1-0)を破って優勝を果たした。

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