昨年9月になりますが「VEE JAYの夜ジャズ Compiled by Tatsuo Sunaga」(ビクター:VICJ-61673)というコンピレーションアルバムを編集させて頂きました。自身の冠が付いたコンピレーションを制作させてもらうこと、これは私のようなDJにとって最大級のご褒美と言えます。さらにはレコードを発掘し、外に向けて微力ながら発信をしていることへの評価を頂いたとも思っています。本当に有り難いことです。

 数年前から始まった「須永辰緒の夜ジャズ」シリーズは各社計8枚(+『外伝』として国内アーティスト曲のみを収録したタイトルが1枚)を数えさらには一昨年からの「ヴィーナスの夜ジャズ」5枚を含め全15タイトルになりました。その中で初めて海外レーベル単体に絞ったタイトルが「VEE JAY」というわけで非常に縁を感じています。

 VEE JAYといえばビートルズなどのロックやポップス、R&Bやブルースなどの黒人音楽を中心に基礎が築かれたわけですがジャズ作品も数多くリリースされています。しかしその雑多性もあってかブルーノートやリバーサイドのようなジャズ名門レーベルとは一線を画しているイメージがあります。

 私はエディ・ハリス(ts)が好きでアルバムやEPはほとんど持っているのですがコアなジャズファンの方にはおそらくイージーリスニングの人という認識をされていることでしょう。今回はそのエディ・ハリスを軸に据えています。しかしウェイン・ショーターの幻の音源やリー・モーガンの初期キャリア作品、ウィントン・ケリーの名盤「On Stage」などからの曲と串刺しにし並列させるとエディ・ハリスの卓越したジャズ脳が俄然浮上してくる。さらにはその辺がコンピレーション編集の醍醐味とも言える事を再確認したような次第というわけで。そんな作業の中でアーカイブを見つけるのに難航したアルバムがこの「The Latin Jazz Ensemble」(VEE JAY International:VJS-1201)でした。

 インターナショナルとはVEE JAY倒産後にカリフォルニアに移転し過去のアーカイブを再発するためのレーベルだったようで、このアルバムのセンターレーベルにも”Vintage Series"の記載があります。即ちリリースは”77年ながら過去に録音されお蔵入りをしていた音源なのだと推測されます。ジャズDJの間では割と知られたレア盤でこのアルバムからは”Trading Up"を選曲しています。ラテンジャズとはいえNYのシーンとは違ったライトなノリ、適度なインタープレイのアプローチもあってジャズ・アルバムとしての体を保っているイメージです。知名度の高いミュージシャンのクレジットも見当たらず、謎のバンド扱いですが唯一ディーン・エリオット(per)の名前を見つけます。私は「自分の事は自分でする」という主義もあって東京屈指の小企業会社を持っていましてその中で制作やリリース、マネジメントなどを行いますがその会社名は「ZOUNDS!」といいます。その「ZOUNDS!」何を隠そうこのアルバムからのタイトルを拝借というわけで、このアルバムこそがディーン・エリオット楽団によるものなのです。

 このアルバムでの”ザウンズ”の意味はモップやボウリングのピン、のこぎりや時計、雨音などの具体音をパーカッションとして使って演奏してしまおうという冗談音楽を示す造語だと認識していますが(ザウンズのタイトルがついたアルバムは幾つか確認しています。その当時のステレオ・サウンド・アクション用のデモンストレーション用のアイコンとして流行していたのかも知れませんが内容は様々)その指揮とアレンジに辣腕を奮っていたのが件のディーン・エリオットその人でした。スパイク・ジョーンズをアップデートしたようなサウンドは一聴の価値ありです。これは草稿中に気がついた発見で、いままさに興奮しているというような状況なのです。

「The Latin Jazz Ensemble/S.T」(VEE JAY International:VJS-1201) 「Dean Elliot and His Big Band/ZOUNDS! WHAT SOUNDS!」(CAPITAL)T1818