研究者も人によって考えがバラバラなのだが、私は専門外の人に自分の知る知見を広めたいタイプの人間であるため、自分の研究について気軽にいろいろ話ができるのは楽しい。今回お試しで受けた依頼は、「特に話すネタの下準備をする必要はない」と事前に依頼者から言われていたのだが、せっかく話を聞きに来てくれるのだからいろいろ詳しくなっていってほしいと思い、私はいろいろ話のネタの準備をしてレンタルされた。依頼に対してどの程度のクオリティ(仕事のレベル)で対応するかは、その人の性分によるところが大きいと思われる。
■レンタルされる条件と注意
今回のレンタル体験を通じて、どうしたら依頼者とWin-Winの関係になれるかを考えた結果、いくつかの条件を依頼者としっかり事前に相談する必要性があげられた。具体的には、(1)オンラインか実際に会うか(2)場所(3)日時(4)レンタル料(5)依頼者の知りたいこと(6)できることとできないこと。レンタル時の往復交通費やカフェなどでの食費は依頼者負担がレンタル業界の相場のようだ。レンタル時の拘束時間の設定は人によるが、私は特に設定せず依頼者が満足したら終了という感じだった。
問題はレンタル料だ。よくわからなかったので、私はとりあえず1万円で依頼を受けたが、Twitterやtogetterに寄せられたコメントでは日給1万円は安いという。企業からの依頼であれば確かにもっと高い料金を提示するところだが、個人からの依頼なので悩ましい。
そこでTwitterでアンケート「自分が博士を一日レンタルするなら個人的にいくらまで払えるか?」を取った結果、180票で一番多かった票はレンタル料「日給1.5万円」であった。これは一つの目安だが、相場はどうすればいいか、ユーザー間で白熱した議論が続いている。また、友達同士など依頼者が同時に複数人になる場合の料金は結論が出ていない。この記事を読んだ皆さんからの意見も是非お聞きしたい。
注意事項としては、二人で対面する形式が多くなると思われるので、双方、相手が危険人物でないかどうかを各々で判断する必要がある。私がマンボウの分類にうるさいように、博士は変な人が多い。
個人レンタルは別に博士じゃなくても双方の同意があれば誰でもできるが、令和型ポスドクの収入を得る手段として意外にアリなのではないかと私は考えている。私へのレンタル博士依頼も大募集中だ!
【主な参照リンク】ウシマンボウ博士.2020.レンタル博士されてみた話.note.2020年11月3日掲載.
●澤井悦郎(さわい・えつろう)/1985年生まれ。2019年度日本魚類学会論文賞受賞。著書に『マンボウのひみつ』(岩波ジュニア新書)、『マンボウは上を向いてねむるのか』(ポプラ社)。広島大学で博士号取得後も「マンボウなんでも博物館」というサークル名で個人的に同人活動・研究調査を継続中。Twitter(@manboumuseum)で情報発信・収集しつつ、来年以降もマンボウ研究しながら生きていくためにファンサイトで個人や企業からの支援を急募している。