道枝:あのシーンはクランクアップに近い日の撮影だったんです。パパとの思い出や、今まで食べたお弁当の味がよみがえってきて……台本上でも泣くシーンだったけど、リアルに涙が出ました。
道枝は井ノ原のことをごく自然に「パパ」と呼ぶ。撮影に入る前、井ノ原のほうから積極的にコミュニケーションを図り、道枝との関係性を作った。
井ノ原:撮影に入る数カ月前に初めてちゃんと言葉を交わしたんだよね。「今度共演する子だよね?」って。その前もそのときも、お互い、大勢の中の一人だったけど、撮影現場では急に親子にならなきゃいけない。だから事前にちょっとずつ仲良くなれるように連絡をとって、「敬語じゃなくて、タメ口でいいよ」と伝えたんです。
道枝:すごくびっくりして。メールだったんですけど、僕、その返信を敬語で送ってしまったんです。そしたら、すぐにパパが僕の文をタメ口に直して送ってきた(笑)。「じゃあ、何て呼ぶ? イノッチでもパパでもなんでもいいよ」と言ってくれたので、パパと呼ぶようになりました。
井ノ原:僕は虹輝と呼んでいて、今は二人だとみっちーが多いかな。ずっと「パパ」としか呼ばれてなかったから、取材とかで「井ノ原さんが」とか言われると、むずがゆいんですよ(笑)。でもね、この映画の撮影現場自体が、優しいふわ~っとした空気が流れていて、無理しないで親子になれる、そんな僕たちを見守ってくれるような、いい現場だったんです。すごく心地よかったですね。
■まっすぐでたくましい
26歳差という親子ほど年の離れた二人だが、それぞれの立場から学ぶことも多かった。
道枝:僕は本当にパパのすべてから学びましたけど、特に現場のスタッフさんへの気配りや、場を和ませてくださる姿は勉強になりました。セットのテーブルを移動するときも、パパが一緒に手伝ったりするんですよ。
井ノ原:人数が少なかったからね。「ここは僕が盛り上げないと!」みたいな状況じゃなかったけど、笑ってくれる人がいたから……。
道枝:もともとあったかい現場でしたけど、パパが入ることによって、さらにあったかくなって、すごいなって。
井ノ原:今後は過酷な現場に遭遇することもあるだろうけど、そういうときは嘘でも「お~、行くぞ~!」みたいに盛り上げてみたらいいかも(笑)。
道枝:やってみます!
井ノ原:僕は彼のすごくまっすぐで、たくましいところに感銘を受けました。芝居の面でもだけど、人としてね。今のジャニーズJr.って、僕らのときと競争率が全然違うんです。人数も多いし、グループがたくさん存在していて、うれしいこと、悔しいこと、さまざまな思いを共に経験して。