毎日のお弁当が、親子の絆を深めていく──。映画「461個のおべんとう」で実話をもとに描かれる父と息子の感動ストーリーを、26歳差の先輩後輩コンビが丁寧に積み重ねた。AERA 2020年11月16日号から。
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映画「461個のおべんとう」は、シングルファザーが高校に入学した息子に毎日欠かさず作り続けるお弁当を軸にして、二人の3年間をじっくりと描く作品だ。原作はTOKYO No.1 SOUL SETの渡辺俊美の感動エッセイ『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』。父親役を井ノ原快彦が演じ、その息子を道枝駿佑が演じている。
井ノ原快彦(以下、井ノ原):最初にお話をいただいたときは、タイトルを聞いただけであたたかいものが伝わってきましたね。お弁当って、親から子に託す、一番はじめのクリエイティブなもの。それに、どういう状況で食べるのかなとか、一緒に食べてくれる人がいるんだろうかとか、親はいろいろ想像しながら作りますよね。
道枝駿佑(以下、道枝):しかも、お父さんが作るっていうのがいいですよね。お父さんからの「毎日の贈り物」という感じで、すごくほっこりする、いい映画に出演できると思ってうれしかったです。
■自然体で臨んだ
井ノ原が演じる鈴本一樹は自由人のミュージシャンだが、明け方まで飲んでいても息子のお弁当だけはきっちり作りに帰る優しい父。道枝が演じる虹輝は、父親に対する劣等感を抱え、自分に自信が持てず、友だちを作るのがヘタな思春期真っ盛り。そんな父子の日常を、二人が自然体の演技で紡いでみせる。
井ノ原:今回のお話では殴り合ったり、いわゆる芝居でぶつかり合うようなことも、事件も一切起きません。でも、実は日常のほうを、演じるのが難しかったりするんですよね。
道枝:そうですね。
井ノ原:僕の役より、虹輝の方が感情が複雑だよね。一樹はただ自分の好きなことを素直に貫いているだけ。でもそれによって振り回されてしまう人もいて。その最たるものが虹輝なんですけど、虹輝の葛藤によって一樹という人間も浮き彫りにしてもらった気がしますね。