道枝:虹輝は思春期だから、お父さんへの葛藤だけじゃなくて、友だちがいない不安や恋のこと、すごく青春ドラマっぽい悩みもある。常に「虹輝ならどうするか」という動きを探りながら演じていましたが、撮影が進むにつれて、一つ一つ虹輝の悩みが解消されていくので、僕自身もスッキリしていきました。
井ノ原:そうか……自分ではわからないかもしれないけど、すごく珍しい演じ方をするタイプだなと思ったんだよね。役に寄っていくタイプと役を自分に引きつけるタイプがいるけど、その中間で。台本に書かれている虹輝と、道枝くん本人がしっかり混ざりあって画面に映っている感じがして。どうやってるのかな、と思ったけど、多分、自然に演じているんだろうね。
道枝:そうですね(笑)。自覚はなかったけど、そう見えるんだったらうれしいです。
■卵焼きがおいしかった
原作にも卵焼きへのこだわりが綴られるが、劇中のお弁当にも必ず卵焼きが入っている。井ノ原の調理シーンも多く、本格的な銅製の卵焼き器に慣れるために、特訓を重ねた。
井ノ原:今回、料理監修チームの一人の飯島奈美さんにご指導いただいたんですけど、僕が体得した卵焼きのコツは、けん玉と一緒で、リズムと膝(笑)。あと、ひっくり返すときに怖がらないこと。でも、カメラの前で料理するのって、恥ずかしさもあるんです(笑)。僕は子どものころから、親が帰ってくるのが遅いときは自分でご飯を作ってたけれど、我流なので。包丁の持ち方からして改めて教えていただきました。
道枝:現場で、パパが焼いた、紅しょうがを刻んで入れた卵焼きを食べたんですけど、すごくおいしかった。先輩が焼いた卵焼きを食べる機会は、そうないので、いい経験でした。
井ノ原:人がなにか食べる姿ってステキなんだよね。僕がこの映画で一番好きなシーンも、虹輝が高校生活最後のお弁当を食べる場面。食べる=生きる行為なんだな、と感じさせてくれたし、僕自身はお弁当を461個も作ってないですけど、作った気にさせてくれました。本当にジーンときました。