目新しい試みとして「ジャックポット」と「スキンレース」があります。
ジャックポットは種目ごとに設定されたタイム差を上回る差をつけて勝った選手が、負けた選手の得点を奪い取る仕組みです。差をつけられた選手の得点はゼロになるので、大きな点が動くことになります。
スキンレースは2日目の最後にある50メートルの勝ち抜き戦です。3分間隔で3レースを行い、8人から4人、4人から2人、最後は2人で優勝を争います。体力と精神力が必要なタフなレースです。初日のメドレーリレーで勝ったチームが、スキンレースの種目を選ぶことができます。
選手をどのレースに使うか、チーム戦略も重要です。五輪や世界選手権とは違った競泳の楽しみ方が提供できる大会だと思います。今回は新型コロナウイルスの感染拡大防止のために無観客で行われていますが、観客が入ったら大いに盛り上がるはずです。
日本の選手たちは世界のトップとの競い合いでレース感覚が磨かれ、試合が続く厳しい日程の中で練習もしっかりできています。
私自身は一コーチとして水泳を愛する者として、その場その場でレースを楽しむというのはこういうことだったんだな、と思い出している感じです。かけ出しのコーチのころに戻ったような気持ちでいます。
(構成/本誌・堀井正明)
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数
※週刊朝日 2020年11月20日号