一方の福も祖父江に比べると少し安定感には欠けるものの、右打者にも左打者にも変わらず被打率が2割台前半というのは立派だ。使い勝手の良さではリーグでも屈指のサウスポーに成長したと言える。
そしてリリーフ陣の起用で大きかったのは、彼らのような勝ちパターンの投手に決して無理をさせなかったということである。登板試合数とイニング数を見てみるとR.マルティネスは40試合で40回、祖父江は54試合で50回1/3、福は53試合で50回2/3と揃って投球回数が登板試合数以下となっている。ちなみに昨年は祖父江と福は揃って投球回数が登板試合数よりも多かった。力のある投手を勝ちパターンでなるべく万全の状態で登板させるというブルペン陣のマネジメントがしっかりとできていたと言えるだろう。
そしてそれを可能にしたのは、やはりエース大野の存在だ。20試合に先発して半分の10試合が完投。1試合あたりの平均投球回数は7回を上回っている。週に1回中継ぎを休ませることができる先発投手がいたことによるブルペンへの負担軽減は計り知れない。また大野以外にも福谷浩司が1先発あたり平均で6.6回、柳裕也も5.7回を投げ切っており、彼らがしっかりとイニング数を稼げたというのも大きなプラスと言える。
野手では打撃面で大きな上積みは見られなかったが、トータルとして考えて大きかったのが木下拓哉を捕手に固定できたところではないだろうか。開幕当初は加藤匠馬、ルーキーの郡司裕也、そして外国人のA.マルティネスとの併用が続いていたが、9月以降は木下が先発マスクをかぶる試合が増加。それに伴ってチームの成績も向上している。元々強肩には定評があったが、今年の盗塁阻止率.455は12球団でもダントツだ。88試合に出場して失策もわずかに2と捕球も安定しており、課題だった打撃も確実性が増している。今年で29歳と決して若手ではないが、捕手としては円熟味が出てくる年齢だけに、来年以降も期待できるだろう。