郵便投票といえば、今回の米大統領選で利用者が大幅に増えたことで注目を集めた。背景要因の一つに、新型コロナの感染リスクを避けたい多くの有権者が投票所に出向かなくても投票できる方法を選んだ、とも指摘されている。ただ郵送には、投函から配達までにタイムラグが生じるため、どの時点までの投票を有効と認めるかといった判断基準をめぐって米国では州ごとに制度が異なることや、集計作業の遅れにもつながりかねないことも浮き彫りになった。

 川邊さんは、日米の郵便投票制度は大きく異なるため単純な比較はできないと断った上で、オンライン投票のメリットをこうアピールする。

「今回、米国で問題となっているポイントの多くは、マイナンバーカードを活用したオンライン投票であれば防げるのでは、と思っています。一つのマイナンバーにつき1票なので、多重投票や『死者の票』という疑念も生じません」

 さらには、投票の秘密は守りつつ投票時刻を正確に記録し、投票締め切りと同時に受け付けを終了させ、ほぼ同時に開票したり、投票とともに開票したりすることも可能という。

「締め切り後の投票は不可能で、何日も結果が出ないということもありません。日本で成功した暁には、海外に日本のオンライン投票モデルを事業展開できればいいですね」

■コロナ対策として導入

 技術面で問題はないのか。

 要請では「顔認証等を用いた本人確認の徹底」「IT機器のカメラを用いた振る舞い判定により他者からの強要ではない旨を判定する」「二重鍵を用いた暗号化により匿名性を確保する」「分散台帳管理により改竄を防止する」といった対策の必要性を挙げ、「現行制度と同等以上の水準を確保することが可能」とアピールしている。

 川邊さんは「技術的にはサイバーセキュリティーと、いかに本人確認を確実にした上で投票の秘密を守れるかがポイント」と指摘する。

「デジタル化によるコスト削減や業務効率化につなげるには、マイナンバーを軸にして関連情報を効率良く処理する必要があり、行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)がカギになります。顔認証など表面だけIT化し、裏では現場の方々が膨大な紙と手作業に忙殺されるのでは意味がありません」

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