室井佑月・作家
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イラスト/小田原ドラゴン
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 作家・室井佑月氏は、他国の政治を詳しく報じても、自国のことを十分に報じないメディアに憤りを隠さない。

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 テレビでは朝から晩までアメリカの大統領選挙の様子が流れている。今、自分たちの国の国会が開かれ、自分たちの問題の話し合いがされているのに、である。

 他国のことになると、メディアは饒舌(じょうぜつ)だ。候補者の政治信条、アメリカは住む場所によって文化的なものに触れられるかどうか貧富の差も激しくわかれるとか、はたまた候補者のいかがわしい噂(うわさ)、そして奥さんの洋服の解説まで、あたしたちがおもしろおかしく見られるようになっている。

 これが自分たちの国のことになるとどうだろう。

 そういえば、香港のデモはしつこく流しつづけたが、あれだけ人が集まった自国の反原発デモや安保法反対デモについても、テレビではちょっと触れただけだった。それこそ、なぜそんなデモが起きているのか、パネルを使って丁寧に解説すべきなのに。

 選挙となると報道の公平性を守るためという理由で、政治のことは詳しく報じない。では普段から報じているかというと、そんなことはない。政府の広報を一方的に垂れ流し、その後、失敗で終わったら、おなじ時間を割いて解説なんてことはしない。そして、政治家のスキャンダル、権力の私物化や公金の横流しなどは、一応やりましたというアリバイ程度にしか流さない。

 では、あたしたちはなにをもって、今行われている政治について考えられるのだろう。この国のことを考えることができるのだろう。はなから、考えなくてもいいと思っているのだろうか。

 この国では一度権力を握ると、永遠に保てるようなシステムがあるのかもしれない。

 話を元に戻して、今回の大統領選で、アメリカは真っ二つに割れ、その分断の根は深いらしい。

 11月5日付の東洋経済オンラインのスタンフォード大学講師であるダニエル・スナイダーさんの「『トランプ敗北』で起こりかねない深刻な危機」というコラムに、別のコラムニストであるフレッド・カプランさんの発言の引用が載っていた。

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