才能豊かなノービススケーターと滑りに磨きをかけるジュニアスケーターが、それぞれの輝きを放ってぶつかり合う、見応えある戦いだった。
11月21~23日、八戸で行われたフィギュアスケート・全日本ジュニア選手権。女子シングルは、松生理乃(高校1年生・16)が優勝(合計198.38)、吉田陽菜(中学3年生・15)が2位(合計189.49)、島田麻央(小学6年生・12)が3位(合計173.44)という結果になった。
10月の全日本ノービス選手権でノービスA(11~13歳)を制し、推薦選手として全日本ジュニアに出場した島田の銅メダル獲得は、衝撃的だった。全日本ジュニアで表彰台に乗っているノービススケーターは、過去に3人しかいない。島田は、安藤美姫(2000年3位)、羽生結弦(2007年3位)、宇野昌磨(2009年3位)に続き、快挙を成し遂げたことになる。
ノービスの試合はフリーのみで行うため、全日本ジュニアのためだけに練習してきたショートプログラムでは、島田はジャンプの回転不足もあって6位と出遅れている。しかし、3回転―3回転を二つ、しかも一つは基礎点が1.1倍になる後半に組み込んだフリーで追い上げた。
島田の特長は、ジャンプの回転が速いことだ。身長138cmの小さな体が、細い軸で高速回転する。公式練習で調子が上がらなかったためこの日は回避したトリプルアクセルを、優勝した全日本ノービスでは、転倒したものの演技に組み込んでいる。しかし島田本人は、得意のジャンプだけに頼るつもりはないようだ。
「スケーティングや表現力はまだまだできていないので、スピードを出すことと、曲を上手く使えるようになりたいです」(島田)
島田の本当の強さは、小学生らしからぬこの冷静さにあるのかもしれない。
ジャンプ以外の要素からも抜群の身体能力が感じられる島田だが、生まれつきの才能だけで勝負しているわけではない。現在、京都と大阪を拠点とする選手育成組織・木下アカデミー(今年4月発足)に所属し濱田美栄コーチに師事する島田は、今年2月まで東京に住んでいた。よりよい練習環境のため、父を東京に残し、母と妹と共に京都に引っ越したのだ。