ライブ終了後に根本を訪ねると、まだ熱気冷めやらぬ様子でこう話した。

「顔を上げたふとした瞬間に、お客さんの顔が見えて、思わず泣きそうになった。マスクで顔が隠れていてもね、お客さんの目が語ってるの。待ってたよって。拍手でも、その気持ちを返してくれてて。もうそれだけで、ウルッとくるよ」

 どんな局面でも支えてくれるファンがいる。根本はその喜びを噛み締めていた。「お客さんを育てるのは、アーティスト」と目を細める。「野音で見た光景は、生涯忘れない」とも言う。

 メンバーは根本の他、ベースの柿沼清史(63)、ドラムの寺田正美(61)、パーカッションの林“VOH(ボー)”紀勝(60)。全員が埼玉県出身で、根本と柿沼は高校の、寺田と林は幼稚園からの同級生だ。これまで休止もなく40年続いていて、最も多くCDを売り上げたのは、アルバム「LOVE SONGS」(94年)で約50万枚。CDの売り上げ枚数だけ見たら、「売れてるバンド」とは言えないかもしれない。だがスタレビは確実に、ファンに求められ続けてきた。毎年2千~3千人規模のホールコンサートを、多い時で年間100本、延べ2400本以上日本全国で開催。リピート率が高く、7割方、多い時は9割の会場が満席になる。大きなヒット曲もないのに、である。それ故、スタレビは「奇跡のライブバンド」と呼ばれている。息が長い精力的な活動の中で観客動員が増え続けるという、バンドの理想形を体現している。

 9月に、スタレビと9組のアーティストとの共演で無観客の配信ライブ「音市音座」が開かれた。“生音”でサバイブしてきたスタレビへのリスペクトを熱く語ったのは、スタレビがデビューした1981年以前から親交のある、杉山清貴(61)だ。

「スターダスト☆レビューというバンドが、日本にある。これは、宝だと思います。殿堂入りさせてあげたいな。日本にこんなバンド、(他に)いないっすよ。もう本当にチャラチャラやってるバンドに言いたい。お前らちゃんと見とけ! スターダスト☆レビュー、かっこいいぞ!って」

 折々にスタレビと「オダ☆レビ」なるユニットを組む小田和正(73)は、今回、「要のためなら」と快く取材に応じた。

「スタレビは、デビュー当初から評判が高かった。僕もスタッフやイベンターから、『ここのバンド、演奏もコーラスも、すごくクオリティが高いんだ』と何度も耳にしていたから。要は、MCの時は気楽に面白おかしくやっているけど、スタレビの音楽は、隅々までしっかりしている。ライブバンドだから、曲の流れを考え抜くし、お客さんにどう届けていくかまで手を抜かないんだ。それがあってこその40年なんだろうね」

 7月にリリースした40周年記念アルバム「年中模索」では、全曲を新曲で揃えたが、この作品をプロデュースしたギタリストでプロデューサーの佐橋佳幸(59)は、親しみを込めて言う。

「要さんって、いい意味でバカなんですよ。ザ・音楽バカ。だから僕、好きですね。だって、最新作って、相当“攻め”ですよ。周年の記念作なら、普通はベスト盤でお茶を濁すでしょ。新譜出さないですよね。それをあえて、『俺たち、ここから頑張るぞ』って、自らハードルを上げたんです」

(文・古川雅子)                                                 

※記事の続きは「AERA 2020年11月30日号」でご覧いただけます。