■外来の陽性率も増加
医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は、院内感染を完全に抑えることは難しいとした上で、対策についてこう考えている。
「たとえば、院内感染が確認された虎の門病院は、経営状態が安定し、医師の質が安定して高いトップクラスの病院でした。クルーズ船の患者も受け入れ、ゾーニングなどの感染対策も徹底していたはず。つまり、院内感染はどの病院で起きてもおかしくないということです。院内感染を最小限に減らすために、病院で働くエッセンシャルワーカーに定期的に検査をし、感染者の早期発見・早期隔離に努めてはどうか」
市中では、検査を受ける人の新型コロナウイルス感染の陽性率も上がってきている。東京都の大泉生協病院は、発熱者や検査の外来をしている。齋藤文洋院長は言う。
「第1波、2波の頃と訪れる患者数は同程度ですが、陽性率が上がっています。以前は7%くらいだったのが、まだ限定的な数字ですが11月第2週は18%くらい。感染の広がりを実感しています。PCR検査の結果は1日か1日半程で出ますし、明らかにコロナとみられる人にはより早く結果がわかる抗原検査を行えば、医療機関に迅速につなぐことができます。今のところスムーズに受け入れてもらえていますが、ベッドが空くスピード以上に、たとえばこの数日で爆発的に患者が増えれば、入院先を見つけられなくなることも起こり得ます」
感染者が増加を続け、院内感染が増えれば、入院待ちや宿泊所の入所待ちが起こり、治療が遅れる恐れもある。第1波、第2波を通じて危惧されてきた医療危機は、第3波を迎えたいま、一層の現実味を帯びてきた。(ライター・井上有紀子)
※AERA 2020年11月30日号より抜粋