新型コロナウイルスの第3波が到来し、感染者だけでなく院内感染も増加している。手ってした対策を取っている病院でも予防できない背景とは。「コロナ第3波」を特集したAERA 2020年11月30日号から。
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感染者が増加するなか、多くの医療者が懸念するのが、病院内でクラスターが発生する院内感染だ。9月以降、院内感染が目立ってきた。青梅市立総合病院(東京都)で患者と職員69人の感染が確認され、11月16日には虎の門病院(同)で患者と職員計11人の感染が確認された。
■予防に限界がある
院内感染の対策には細心の注意を払っている病院でも防ぎきれない背景には、新型コロナウイルスの特性があるという。
「新型コロナウイルスには無症状感染者もいて、さらに発症の2日前から感染させる可能性がある。全く別の病気で入院した患者からクラスター化したケースも報告されており、いくら予防に徹しても限界があります」(東京都内の病院の副院長)
人間である以上、意図せぬ隙も生まれる。
「理屈ではどんな感染対策が理想的かはわかっていても、休憩中などマスクを外した僅かな時間やちょっとしたやりとりで、感染者と接触している可能性はある。電子カルテの共用パソコンを打っている時に、急な呼び出しがあれば、手を洗う余裕がないまま応じることもあるかもしれない。休憩室で食事中にマスクを外したまま、おしゃべりをしてしまうこともあるかもしれません」(同)
長期化したコロナ禍で、全員に会食をゼロにしろ、休日の外出や旅行を控えろというのは現実的ではない。
「職員には都外に出る際も旅行届を出してもらうことにしていますが、プライベートを明かせという無言のプレッシャーです」
院内感染も、感染者との濃厚接触による自宅待機もすぐ隣にあると感じている。ある病棟スタッフの陽性が判明した際、発症3日前にその職員と自宅で会食したスタッフがいた。
「濃厚接触者の基準は発症2日前までですが、念のため抗原検査を行ったところ、偽陽性が出た。その濃厚接触者は10人もいました。一時は全員が自宅待機となったものの、後のPCR検査で陰性と判明したので、2日間で全員職場復帰できました。感染症である以上、誰かがコロナにかかることは止められない。かかった場合に広げないように努めるべきと考えています」